どこにもいないわたしが
いっぽステップをふみだそうとすると
そこは　ちのうみでした。

どこにもないなにかがはじまったのね。

おおかみさんはなにをぶつぶつと
つぶやいていたのかな。
ひとりで。ひとりきりで。

いいえ、だれもいないのだからそこにつぶやきなどないはずなのに。

どこにもいない。どこにもいわない。
なにもいわずに、あゆむだけ。

ジャンはどこかへいっちゃった。

だれがなにものでもないんだろう。
だれがなにものかであるんだろう。

ああ、なにもなければおくられるだけです、おねえさん。

みつけよう。なにものかを。
みきわめよう。なにものかを。

けれどこまったことに、このめは
なにもわからない。

くろのうさぎさんはくるくるおどる。
ふくろうさんとわるつをおどる。

しろのうさぎさんはつきつけた。
なにもないものをつきつけた。

でも、ああ、そのやいばはとてもするどかった。

しろのうさぎさんはおくりたくない。

くろとふくろうはわからない。

くろのうさぎさん。ぎゃくよ。

ではだれをおくろう。かんがえる。かんがえる。

きいまった。

そう、そこをまさにかんがえていた。