「落ちたら死ぬぞ」
「死のうとしているのよ」
にべもなく言われた。
と言うか、やっぱり自殺しようとしてたんだな。
そうでもなきゃ、冬の寒い時期にわざわざ屋上くんだりまで来ないか。
俺のような、物好き以外。
「何でまた、死のうとしてるんだ」
「いいの? 私に関わると、不幸になるわよ」
質問に質問で答えるなと、親に言われなかったのだろうか。
俺は言われなかったな。どこの家庭もそんなもんかも知れない。
「それについては、多分大丈夫。で、柳葉は何でまた死のうとしてるんだ」
「名前」
今、何と言ったのだろう。
名前、とか聞こえた気がするが。
「名前、教えて。あなただけ一方的に名前を知ってるの、ずるいじゃない」
「ああ、クラス違うから解らないか。一年B組の片瀬だ」
ところで、質問を質問で返すのって、結構失礼じゃないか?
失礼なことはなるべくするなと、親に習わなかったのだろうか。
俺は習ったような気がするが、割と無視してるな。みんなそんなもんかも知れない。
「下の名前は」
「内緒だ」
「どうして?」
「内緒にしたいからだ」
人が内緒にしたがってることは無理に聞くなと、誰かに……。
言われなくても察するよな、普通。
曰く、言ってることの意味が解らない、だっけか。
確かにこれは理解しがたい存在だ。