「じゃあ、頂きます」
それならはい、と杯を渡して、桜君についで、自分にもついだ。
「桜君の美しい未来の月に乾杯!」
「乾杯! ってそれ色々混じってませんか!」
「あっはっは、気にしない気にしない」
一気に呑んで、熱さに身をよじらせる。
「っはー! でさー、桜君それいつからなのー?」
「そうですね、兆候が有ったのは一年前でした。この食欲が出てきたのは半年前ですね」
「でも、その頃は平和だったよね?」
「あれ? 舞さん忘れてますか? そもそも知らなかったかな。うちはそのころから、肉中心の食事になったんですよ」
「あー、あー! で、それでどうにか凌げてたって事なのね?」
「そういうことです。でも、まぁ、結局無理だったのは解ってますよね」
「うん、最初の犠牲者は一ヶ月半前。住所不定無職、河合総一郎が何かに食い殺されたかのような状態で発見される。だった」
「俺は、ああいうおっさんとか食べたくなかったんですけど、飢えすぎていて、もうどうしようもなくて……」
「大変だったねぇ……」
頭をぽむぽむしながら、人狼事件についての詳細を思い返す。